ご縁カウンター

2005年01月22日

ワインとアメショウ

ゴン太


ある日の事である。
姉がとんでも無い事を言い出だした。
「アメショウの子猫が生まれるんだって、貰って欲しいって言われたの」
その一言で静かにテレビを見ていた父・家ちゃんがクルッと姉の方へ顔を向けると、何か言いたそうな顔で見ている。
うちには黒と白のにくいヤツ、竹千代(たけちよ)という入退院を繰り返した猫が既に存在していた。
貰った時は野良ちゃんを拝借したわけで、無料だったのだが、手術費に我が家にしてみたら莫大な金額が掛かっているのである。
そんな猫が居るのもかかわらず、もう一匹とはどう言う事だ?と言いたいのが家ちゃんなのであるだが、文句は全て母上にぶつけるのでその場では黙っていた。
姉いわく、
「アメショウをペットショップで買ったら8万円はするんだよ。それをくれる人がいるんだよ」
8万。この金額はデカイ。
家ちゃんの表情がふと軽いものに変わりつつあった。きっと耳はダンボーのように大きくなっているに違いない。
正直に言うが、猫の世話をしているのは最終的に家ちゃんへと変わっている。
タケを飼う時、私達は『自分達で世話をするから』と言っていたはず。それが母上を通り越して、今や家ちゃんが率先してタケの世話をしているのである。
トイレの処理、ご飯の用意。話が違うと言いたいのは家ちゃんの方であろう。

そんな姉の爆弾発言から数週間後、忘れた頃にまたも姉の第二爆弾が投下された。
「アメショウ貰う事になっちゃった……」
姉の話によると、会社の先輩の家でアメショウのオス・メスを飼っていて、お腹に子猫が居る事が分かってから、社内で貰ってくれる人を探していたという。
姉のデスクにタケの可愛らしい写真を飾っているのを知っていた先輩は、是非とも姉に貰って欲しいと言ってきたそうだ。
家族で大切にしているタケがいるから、きっとうちの子猫も可愛がってくれるだろうと踏んでのことらしい。
結局断りきれず、姉はアメショウの子を貰う事になったのだ。

他の同僚もその先輩から一匹子猫を貰い、ただでは申し訳無いと言う事で、幾らか包んだらしいが、姉の場合チャッカリしているのは母上譲りで、2000円のワイン一本で貰って来たのである。
その頃私は、洋服のショップを任される立場で殆ど店に入り浸りだった。姉と私は仕事の都合ですれ違いになりがちで、ゆっくり話す時間があまり無く、猫が来る事を知ったのは母上から聞かされての事だった。

そして先輩と約束した日。アメショウの子猫が我が家に来る日である。
仕事中、今日猫が来る事をふと思い出していた。それまではスッカリ忘れていたのであるが、思い出すと嬉しくなり帰る事ばかりを考えてしまう。
少し浮かれ気分で帰宅すると、ワインと引き換えに貰ってきたアメショウの子を探した。
姉の部屋にゆくと、姉は雑誌を読みながら音楽を聴いている。
「あれ、猫は?」
私の声に姉は肩を指差した。
ベッドの横に寄りかかって姉は座っている。その肩の部分に顎を置いて、静かに眠っている小さな猫。毛の種類はブルータビーというチャコールグレーのシマを持つ猫だった。
(タビーとはシマの事を指す)
後ろ頭を見るとウリ坊のような縦じまの線が可愛くて、グリグリしたくなった。
「可愛いね」
「でしょー。でもね、こいついい根性してるんだよ」
「え?」
「東海道線で鳴くかと思ってバックを覗いたら、チラッとこっちを見て直ぐ寝ちゃったんだよ」
「へー」
「そんで、寝たまま家に到着しちゃったよ」
この猫の根性を初めて知った瞬間である。この時からこの猫の根性の良さは備わっていたようであった。

翌朝、遠くから母上の声が聞えた。
「ゴン、ゴン……」
ベッドから起き上がると、更にその声は近くなった。
「ゴン、お前ウリ坊みたいだね」
誰の事を言っているのか暫くは分からなかった。
部屋から出ると、小さな子猫が走り回っている。その猫に向かって母上は言った。
「ゴン、お前可愛い顔してるね」
「ゴン?」
名前が勝手に決められていたのだ。
しかもよりにもよって、ゴンである。
確か、昨日姉の話だと別の名前を言っていたのを思い出していた。
血統書の登録を先輩がしてくれたらしく、その名前はアダムという立派な名前があった。それなのに、なぜゴンなのだろうか。
私はゴンの由来について、恐ろしいが母上に聞いてみた。
「だってまだ名前決まってないでしょ。だから名無しのゴンベイでゴン太」
「な、なんで……」
「可愛いじゃない」
嬉しそうに母上は言が、私的に我が親にして頭が痛いものである。
「アメショウにゴン太ってどういう事よ?」
「面倒くさいじゃない。いいのゴン太だから」
「……」
開いた口が塞がらず、ガックリとした目をゴンと呼ばれている猫に目線を落とした。

結局、ゴン太には立派な漢字をつける事になった。それは姉が決めた事であるが、箱根駅伝で有名な権太坂の権太である。
こうして、ブルータビーの元アダムはゴン太と命名され現在も幸せに暮らしている。
ただ問題は、タケとの不仲をどう改善するのかであるが……。


posted by まわた at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ☆権太 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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