ご縁カウンター

2005年01月15日

居なくなった竹千代 1

竹千代(たけちよ)が家族の一員になって気が付けばクリスマスが訪れていた。
タケの為にクリスマスプレゼントとして新しい首輪を買ってあげることにしたのである。
タケの毛色は黒がメインなので、赤い首輪がよく似合うのだ。今までつけていた首輪はノーマルな赤い首輪だったので、少し豪華に見えるプラスチックの宝石もどきがついた赤い首輪をペットショップで買って来た。
家に帰ると早速タケに宝石もどきのついた赤い首輪をつけてあげた。

「かわいい……」

take


新しい首輪をつけてもらったタケは嬉しそうにしている。そんなふうに私達は思っていたので、ニヤニヤした顔で私と母上は顔がほころんでいた。

暫くしてタケは新しい首輪と共にいつもの散歩へ出かけて行った。
家の周りは住宅地になっているのでそれほど車の往来が激しいところではなかった。
タケが行動する範囲は家の周りの安全な場所で、その範囲を超えると商店街と言う事もありバス通りだったり、車や自転車の往来が激しくなる。元野生の勘というやつで、危険区域を把握していたのかも知れない。
うちには散歩に出かけたタケを呼ぶ方法があった。それは鈴を鳴らすとダッシュで家に帰ってくる習性で、鈴を鳴らす時は『ご飯だよ』の合図に使っていたのだ。
鈴の音を聞いたタケは、ご飯の知らせだと思い急いで帰ってくる。家族にとっては安心であり、タケとの通信方法の一つでもあった。

日が暮れるにつれ、夕方6時ごろになるとタケは散歩から帰ってくる時間であるが帰ってこない。いつもなら玄関の戸を少しあけているので、少しの隙間からヒョッコリ顔を出し、玄関に置いてある餌を美味しそうに食べている時間なのだ。それにもし遅くなったとしても鈴を鳴らせば急いで帰ってくる。
ところが今日に限って帰って来ない。
焦った私は最後の手段を使うことにした。その手段とは、猫缶を缶きりでカンカンと叩くと鈴で帰って来ない時でも必ず帰ってくるのである。
私は最後の手段を試みたがそれでも帰って来なかった。
「家出したのかな?」
そんな不安が私と母上の脳裏をかすめた。
気が付けば時間は7時を回っている。時間が経つにつれ不安も増していった。
テレビを見ていてもタケが帰ってくるのを気にして、心配でテレビどころではない。
夕食の支度をしている母上も、手を休め外の方を気にしながら支度を進めている。
私はいてもたってもいられなくて、家の周りを鈴を手にしながら見回ることにした。

寒くて暗くなった空の下、タケは今頃寒くて震えているかも知れない。もしかしたら、人の手によって連れ去られたかも知れない。
だんだんと気持ちは悪い方へ転がってゆく。
不安をあおりながら、タケがいそうな場所を覗き込んでは弱い声をあげて名前を呼んだ。
「タケ……タケ……」
名を呼びながら、力のない鈴の音が暗くなった辺りに響いている。
「チャラン……チャラン……」
後ろの茂みからカサッと音がする度に振り返り、タケではない猫だと分かるとガックリと肩を落とす。心配と不安で涙が出てきてしまう。
「タケ……どこ行っちゃったのよ……」

そこへタイヤのきしむ音が聞えたと思ったら、父・家ちゃんが会社から帰ってきたのである。駐車場に車を止めて出てきた家ちゃんに私は弱い声で言った。
「お父さん、タケがいなくなっちゃった」
更に泣きそうな顔で訴えると、家ちゃんの顔が曇りだし突然の事に固まっていた。
「タケいないのか?」
「うん」
家に入るととりあえずご飯を食べようということになったのだが、この日の食卓はタケがいない事で暗い雰囲気になっている。
テレビの音が意味も無く流れているけれど、私達の頭の中はタケのことでいっぱいだった。
そこへ姉が仕事から帰宅した。姉は玄関の戸を閉めようとしていたので、母上が閉めない様に声を掛けると、不思議そうな顔を覗かせた。
「タケいないの?」
何も知らない姉に事情を説明すると、これまた落ち込みモードになるメンバーが増えただけでなんの解決にもならない。

楽しいはずのクリスマスは、タケがいない事で暗いクリスマスとなってしまった。
タケはいったいどこへ行ってしまったのだろうか……。
不安と淋しさに胸が痛くてしかたがなかった。


居なくなった竹千代 2

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posted by まわた at 12:24| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ☆竹千代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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