ご縁カウンター

2005年01月14日

飼い主初心者で君は幸せかい?

竹千代(たけちよ)を育てるにつれ、彼を愛称で呼ぶ事が多くなっていた。
「タケちゃん、こっちおいでよ」
「タケチ駄目じゃない」
「こら! タケ!」
どんな愛称を言われてもタケはちゃんと反応を示す。
猫は犬と違ってあまり飼い主にはなつかないと言うが、それは間違った話で、私になつかなくても母上にはベッタリな猫だったのだ。

家の中でタケはヤンチャだった。
ゴキブリやクモを発見すると追い掛け回し母上のかわりに退治してくれる。それは害虫の駆除と言うよりかは遊びの一つだったのだろう。
バタバタと暴れているかと思えば、急に静かになり、遊び疲れたのか膝の上で眠ってしまう。そんないろいろな場面で愛らしい姿を私達に見せてくれ楽しませてくれた。
時に予想もしない行動をするのである。
朝食を食べている私。朝はめっぽう苦手な方で、ボーッとしながらテレビを見ながらご飯を食べていると、私の目を盗んで食卓の上にある味噌汁に顔を突っ込んではペチャペチャとなめていた。
その音に我に返ると驚いたものである。

タケがうちの子になってから、毎日が楽しくて家族内のギクシャクしていた関係がタケのおかげで良くなっていた。
父・家ちゃんの気性が妙に落ち着き、勝手に出かけていた友人との旅行についてはあいも変わらずであるが、タケが遊びそうなキーホルダーのお土産を買って来たり、渋々O.Kしたわりにはタケの存在を認めている。その理由は、家ちゃんが仕事から帰ると母上と共に家の前で待っていてくれるからだ。
親不孝な娘達は出迎える事も無く自分勝手にしているのだが、タケは休む事無く出迎えていた。これが家ちゃんにとってどれだけ嬉しかったのか、タケに掛ける声色でその嬉しさが伝わる。タケにしてみたら酒のさかなが目当てだったれど、それでも家ちゃんにとって自分になついてくれる猫に愛しさがあったようだ。

タケの食欲は凄いものがあった。面白いほどなんでもよく食べた。
らーめん・ショートケーキ・おはぎ・パン・ポテトチップスなどどれも塩分糖分の高いものばかり。
飼い主初心者がやってしまいがちだが、タケがおいしそうに食べているので私達はホイホイあげてた。

ある日のこと。
急に元気が無くなったタケに母上が一番最初に気が付いた。
お腹だけがポッコリ出てこたつの中で元気のないタケを母上は心配していたのである。
「朝から元気が無いのよ……」
こたつの中を覗くと母上の言うとおりタケはグッタリとしている。
母上と相談して病院に連れてゆくことを決め、電話帳で家から一番近い獣医を探した。
今と違ってあの頃は獣医をしているところが少なく、電話帳に載せているところは悲しい事に家の近所には無かった。
一番近いところで隣駅に獣医がある。その獣医に電話を掛け診察してくれるかをたずねた。不運にも休診日であったが、獣医さんの好意で診てくれると言ってくれた。
獣医さんに感謝しつつも行った事のない場所へ一人で行くのは不安だった。そんな不安から身近な友人に電話をして、付き合ってもらう事をお願いする事にした。友人に事情を説明するとその友人は快く引き受けてくれたのだ。
自転車のカゴにタオルを敷いてタケをタオルでくるみカゴの中に入れた。タケは不安そうな目で「どこへ連れて行くんだよ〜」と言いたげに見上げると、そうとう具合が悪いのか力なく顔を伏せた。
そんなタケに「病院へいって診てもらおうね」と声を掛けるが、本当のところ心配でどうしようも無く『獣医に連れてゆけば大丈夫』と自分に言い聞かせ気を確りさせた。そしてペダルをこぐと友人と待ち合わせをした場所まで急いだのである。

待ち合わせの場所には既に友人の姿があった。
「大丈夫?」
彼女も一緒になって心配してくれている。そんな友人の言葉に私の気持ちは少し楽になっていた。感謝感謝である。

隣駅の獣医に着くと獣医先生は待っていてくれたのか直ぐに診察をしてくれた。
ポッコリと出たタケのお腹に触れると、先生は納得した顔で言った。
「虫がいるね」
「虫?」
友人と私は顔を見合わせて言った。

虫とはよく言う寄生虫。サナダ虫という人もいるが、白くて長くてゴムひものような気持ち悪い虫である。戦前・戦後に人間にも寄生していた虫で、腸のなかに住みつき、栄養分を吸い取って大きくなる虫で長いもので1メートルを超えるのもいるらしい。症状としては下痢を引き起こしたりするらしいが、以前あるテレビで寄生虫ダイエットというのを見た事がある。わざと自分の腸に寄生虫を住まわせ、余分な栄養分を食わせるらしく、それがダイエットに効果があると言う恐ろしい話だ。

先生はすぐに虫下しの薬をくれ「これを牛乳で混ぜて飲ませてね」と言った。
悪い病気ではない事を知り、私と友人はホッと胸をなでおろすと、会計を済ませ帰宅する事にした。途中友人にお礼を言ったあと別れ、自宅につくと母上に先生から聞いた事を報告した。

腸に寄生虫がいる野良猫は多いという。野良猫は自然と虫下しの方法を身につけている。どうやるのかは不明であるけれど、野良猫には野良猫の生き方があり生活方法もあるのだろうと思う。怪我をしても薬草になる草を知っていたりするのかも知れない。
野良猫の知恵というやつなのだろう。


早速先生に言われたとおり器に牛乳を入れると薬を混ぜてタケの前に差し出した。
だがタケはそれを見向きもせず、なかなか牛乳を飲んでくれない。こんな時にスポイトがあればと思っていると、ストローがある事に気が付いた。そこで閃いたのはストローでスポイトの原理を利用した方法である。
ストローの先を牛乳につけ、ストローの反対側を親指で押さえると牛乳につけた方の先に少しだけだが牛乳が吸い取られる。
そのままストローの先をタケの口元に当てて、押さえていた親指を放すと吸い取られた牛乳がタケの口にしみ込むということだ。
嫌がるタケを愛のムチとばかりに叱りながら、その方法で薬を飲ませ続けた。苦労したかいがあって、なんとか飲ませ終えることが出来たのである。

次に日の朝。
母上の話だとう○こと一緒に長いゴムひもの様な虫が出たそうだ。それが寄生虫の姿である。母上はそれをティッシュでつまみ引っ張り出したと言う。
今思えば、見なくて良かった……。
タケは獣医先生のおかげで元気になってくれた。

だが、その頃の私達はタケに人間と同じ物を食べさせることをやめずにいた。
それがとんでもない大きな間違いに気がついたのは翌年の事である。

これはこの先獣医にかかる予兆なのかも知れない――。


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posted by まわた at 11:40| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ☆竹千代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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