ご縁カウンター

2005年01月12日

黒と白のにくいヤツ

初めてネコを飼ったのは、私がまだ中学2年生の夏の事である。あれは忘れもしない、8月13日。
家では父・家ちゃんがかなり厳しかった為、犬・ネコを飼うのを反対さえれていたが、
その頃になって家ちゃんの性格は丸くなっていた。
家ちゃんについてはまた日を改めてご紹介しようと思うけれど、ここで軽く父について説明しておこう。

人の迷惑かえりみず、世界は自分中心に回っているようなところがある。
東海道線品川駅付近での一幕、恥かしさがそこにあった。
有楽町へ宝くじを買いに行く時の事。通勤ラッシュが終わりつつある時間帯に家ちゃんから妙な音が奏でられた。私達にとっては聞き覚えのあるあの音。『ぶっ』である。
ドレミで言うならば『レ』辺りのチョッと低めな感じでしょうか、そんな音がガタンゴトンと音を立てる車内に響いたのである。周囲の人たちは、ビックリした様子でこちらをチラチラみている。
そうなのです。これは家ちゃんのレのおなら音。ある意味騒音でしょうが、家ちゃんは恥かしいという気持ちをあっちへやって『どこでオナラをしようが出るものはしかたが無い』と屁理屈を並べているのだからこれは死ぬまで治らないだろう。

小さい時叱られると新聞紙を丸めそれで叩かれる。
九州男児であり母上をよく困らせていた。なにせ、仕事から帰って食事の用意が
出来ていないともの凄く不機嫌になるのだ。
あの頃は自分で動く事を知らないように母上にあれこれ注文をつけていた。
「お茶!」「新聞!!」「テレビ!!」「風呂!!」「着替え!!」
昭和のホームドラマを見ているような世界であるが、亭主関白というヤツである。
現在では嘘のように『自分でやれる事は自分でやる』というふうに変わり、母上としてはやっと楽になれたのだけれど、未だにその名残は消えていない。

そんな父を持つ私であるが、中学二年生の8月13日は忘れられない日である。

8月13日の昼。姉と私は母上からある情報を入手した。
『裏の駐車場に子猫が生まれたみたい。いっぱい居るよ!』
今では猫の集団なんてのは珍しいけれど、あの頃は普通に野良猫の集団がいたのである。ボス猫らしきシマの綺麗なたくましい猫がオス猫。小さく黒毛と白の靴下を履いたような可愛らしいメス猫の間に6匹の子猫が生まれたのである。
姉と私は母上の言葉に胸を弾ませて、裏の駐車場へ子猫達を見に行った。
この時私達の心の中で暗黙の了解が出来ていた。その暗黙の了解とは、気に入った猫がいたら家で飼うという希望である。
私達は駐車場へ出ると子猫ちゃん達を探した。だがその姿は見えない。二人して耳を澄ますと、どこかで『ミャーミャー』と子猫の声が聞えるのでその声の方へ近づいた。
「いた」
見つけたのは私。姉を手招きで呼ぶと、姉妹そろって子猫達の愛らしい姿を温かくなる気持ちで見ていた。
猫達は会社と駐車場のフェンスの間、人一人が入れるスペースに母猫のお乳を吸いながらコロコロとしている。ある猫は兄弟猫とじゃれあったり、寝ている子もいたり、それはなんとも言えないほのぼのとした光景であった。
私達の存在に気が付いた母猫は目をギョッとさせると、子猫達を置いて建物の奥へ逃げてしまったが、何も知らない子猫達は警戒もせずコロコロと転がっている。母猫を追い出した形になって今思えば心苦しいが、あの頃の姉と私はそんな事よりも子猫達の愛らしさに心を奪われていたのだ。
フェンスを乗り上げるように私達は覗き込んだ。
「お姉ちゃん、この子達可愛いね」
「うん、可愛いね……」
なんとも言えない私達の顔は、似た顔で微笑んでいた。
子猫達からすれば『悪魔姉妹の不気味な笑み』にしか思えないだろう。そして母猫にとっては恐ろしい事件だったに違いない。
私はサラリとした気持ちで姉に言った。
「ねぇ……どの子にする?」
親の了解も得ず飼う気満々で姉にたずねると、姉も私と同じ気持ちでいたのか、
「そうだね……」
とイケニエを選ぶかように悪魔姉妹は相談をしている。
ニヤニヤと不気味に笑う悪魔姉妹の姉はターゲットをしぼって、
「コイツにしよう……コイツは愛嬌がある顔をしているからね」
イヒヒと笑うように姉はある子猫を指差した。
母猫と同じ毛色の子猫。黒と白のにくいヤツ。

実行犯は私。その黒白の猫を捕まえようとフェンスから身を乗り越えて、その子を捕まえた。その子猫は運動神経が鈍いのか、すんなり捕まえる事が出来たのである。

こうして悪魔姉妹の生け捕り作戦は成功した。二人して上機嫌で家に戻ると、母上にその子を見せて飼いたいことをアピールした。
お決まりの台詞で……。

「二人で世話はするから」

小学生じゃないんだから的なお願いに「面白い顔をしてるね」と言いつつ、母上も結構飼う気があったように思える。
面白い顔と言うのは、顔に黒いマスクをかぶり口元やあごの部分が白く、鼻と口にかけて黒いヒゲをはやした様になっている。両手(前足)と両足(後足)は白く、手袋と靴下をはいた様になっている。
母上はその猫を愛しく見つめるが、その顔はほんの数分しか見せず、現実に目を向けると言った。

「お父さんが良いって言ったらね……」

そうだった忘れていたのだ……。一番厄介な人物。その人物にちゃんとした理由が無いとなかなか「うん」とは言ってくれない。
姉と私は考えた。考えたところでろくな答えしか出ないだろうけど、今は考えるしかないのである。


黒と白のにくいヤツ 2

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posted by まわた at 10:24| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ☆竹千代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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